コンサルティングの落とし穴-②巷に溢れているマーケティングは大企業向け

どの書店に行っても、またアマゾンなどのネット書店でも、マーケティング関連の本が溢れています。多くのマーケティング用語も一般的に知られるようになりました。しかし、多くの中小企業の経営者の方々からすると、多少の違和感があるのではないでしょうか?

例えば有名なSWOT分析があります。Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)に分けて自社や自社を取り巻く環境を分析します。弱みを克服またはどうカバーするか考え、強みを強化してUSPUnique Selling Proposition: 他社にない独自の売り提案)を作成。そのUSPを効果的に使いビジネスに参入する。また、どういったビジネス上の脅威やリスクがあり、それに対してどう備えておくかを考える。考え方自体は理解出来ますし、聞けば尤もな分析です。しかし中小企業からすれば、自社の弱みは幾らでも挙げられるのに、強みと言われても特にない。新規ビジネスの機会は思い付かないないのに、新興国の脅威、他社の参入、材料費の値上がり、客先からの値下げ要請等々、ビジネス環境は脅威ばかり。SWOTを作成すると、StrengthOpportunityは空欄で、WeaknessThreatだけとなるケースが多くあります。

競争のないセグメントに参入しようとする“ブルーオーシャン戦略”。そんなものが分かるなら苦労しないと嘆き声が聞こえて来そうです。5Forces分析(業界内の競争に影響を与える要因を5つに分類し、それぞれの関係性を分析する方策)をやっても、常に買い手が有利な立場におり逆らえない状況。売り手も同じような境遇のサプライヤーなので、コストが上がれば値上げ要請をして来るばかり。認めないと倒産してしまうような会社も多い。取り扱い製品は幾らでも代替えの可能性があり、常に新興国からの新規参入のプレッシャーがある。価格で優位に立つコストリーダーシップ戦略が取れる程に規模が大きくなく、どちらかと言うとコスト競争力がない。差別化を図って他社との違いを出そうとしても、それだけの技術力もなく新しいアイデアが出ない。PPMProduct Portfolio Management:経営資源を最適に配分することを目的としたマネジメント手法)をやっても、今まで開発をして来なかったので将来を期待出来るような“スター”と呼べる製品もない。以前は利益を生んでいた“金のなる木”である製品も、コスト低減という名目で実際には利益を取り崩して来たため利益が出難くなっている。残っているのは全く利益を生まない“負け犬”製品か、シェアを取れそうにない“問題児”製品のみ。

多くの中小企業の現実は、このようなものではないかと思います。そのため幾らマーケティング理論を学んで使ってみようとしても、作ってみたけど使えないという事になっていないでしょうか?こうした巷に溢れているマーケティング理論や方法は状況を整理するには役立つので、大企業などのマネジメント層への説明資料としては有効です。しかし中小企業向けのマーケティングには、もう少し現場に近い担当レベルで考え、使い方を工夫する必要があります。大企業と同じことをしていたのでは、人員層も薄く技術力も劣る中小企業では戦略として使えません。理論武装して机上であれこれ検討するだけでなく、実際にお客様や市場を訪問して得る情報の方がずっと有益です。現場や市場の意見を吸い上げることが大事なのですが、多くの中小企業では上手く行っていないようです。