なぜ売上げが伸びないのか?-⑤採算を考えずに受注している

儲からなくても良いと考える経営者はいません。しかし実際に見積もり依頼が来て価格交渉をしている中で先ずは受注を最優先してしまい、どうやって採算に乗せるかは受注してから考えるという経営者の方は多くいるように思います。時には損益分岐点ギリギリどころか、多少の赤字でも受注を優先してしまうケースも良くあるように感じます。

確かに見積もり方法に問題があるから赤字に見えるだけで、新規投資もなく新規人員投入もないから固定費は増えず、やってみたら何とかなるような場合もあるでしょう。またVA/VEによるコスト低減や、材料費の価格交渉をすることで採算に乗せられると見込んでいるのかも知れません。しかし今までの経験上、こうした希望的観測にもとづいた受注案件で十分な利益確保が出来た例は殆ど見たことがありません。そもそも見積もり方法に問題がある時点で、それを放置してしまっている会社は、利益を出せる体質ではないと思われます。また見積もりも楽観的な前提条件で作成していることが多いので、プロジェクトが始まってしまうと実は大赤字だというのが実際のところではないでしょうか?

そうして一度受注してしまえばお断りする訳に行きませんから、不採算プロジェクトが何年にも渡って継続されることになってしまいます。新規案件が来たとしても、不採算プロジェクトで見積もった金額がベースとなりますから、次の案件も不採算プロジェクトになるでしょう。受注は増えても不採算プロジェクトでは人員増加も出来ませんので生産現場は疲労してしまいます。利益が出ていませんから、仮に新しいことをやりたくても、それに振り当てる資金がありません。採算を考えずに受注してしまうことの問題は、こうした負の連鎖が続いてしまうため、新しい取り組みをする余裕がなくなってしまうことです。会社の財務体質も弱いため、何か改善をしようとしてもその余力も資金もありません。また新たに人員増加も出来ず仕事は増える一方で給与や待遇は改善されないので、最悪の場合は従業員が退職して行ってしまうことです。

どんな技術や製品も進化させて行かなければ時代に取り残されてしまいます。技術や製品を進化させて来なかった結果、誰でも作れるような製品しかラインアップになく、他社や新興国との価格競争に巻き込まれ、更に利益が出なくなってしまう。そして最後には受注出来なくなり仕事が激減してしまう。こうした負のサイクルから抜け出すには、不採算の仕事を確保するだけでなく、付加価値の高いビジネスを狙って行く必要があると考えています。資金がないから何も手を打てないという話も聞きますが、大抵の中小企業では“乾いた雑巾を絞る”まで改善活動をやっていないので、多少の資金作りは可能だと考えています。その資金を使って、先ずは出来ることから始めてみては如何でしょうか?