コンサルティングの落とし穴-③中小企業と取り巻く環境への理解不足

大手企業は生き残りをかけて海外へ生産をシフトしました。そのため、一時期は国内生産の減少から売上げが激減した中小企業も多かったのではないでしょうか?しかし多くの中小企業では簡単に海外へ出て行けるだけの資金もなく人員もいません。何とか決死の覚悟で海外生産をやったとしても、海外でもコスト競争は厳しいですし、当然国内でもコスト競争が厳しく、常に新規参入者へ脅威があるので、客先からの価格低減要求にも応えざるを得ません。そのため、十分な利益を確保している中小企業は少数派ではないかと思います。一方で昨今は労働者の確保が難しいのに加え、また給与引き上げという風潮があるので、多くの会社では多少なりとも給与を上げています。ここ最近は倒産件数も減少しています。ビジネス環境は厳しいという話は良く聞きますが、売上げが毎年大幅に減少し倒産危機に直面しているというような、切羽詰まったという状況ではないようです。そうなると中小企業の経営は苦しいのでしょうか?

長期的に考えるとビジネス環境は大変厳しくなって行くと考えます。売上げは現状維持か多少の減少傾向という状態であっても、一番大きい懸念材料は新規ビジネスが獲得出来ていない点です。どの製品にもライフサイクルがあるので、現行ビジネスは遅かれ早かれ衰退せざるを得ません。新規がないという事は、その会社の将来はないという事です。新規ビジネス獲得に向けて様々な努力をしている会社もあります。しかし、中小企業で新規ビジネスを獲得する方法として多いのが、今の製品を新規顧客に売って行きたいという対策です。考えてみれば分かると思いますが、現行製品を新規顧客に売るというのは成功率が非常に低いのです。その会社にとって新規顧客であっても、その顧客もすでに他の取引先から似たような製品を購入しているでしょう。売ろうとしている製品のコンセプトが新しくまだどこも参入していない、パテントで守られており優位な立場にいる、販売独占権を持っているなど特殊な事情があれば別ですが、多くの中小企業の製品は特に新規性がないものがほとんどです。そうなると価格を下げて売るしかなくなるのですが、これでは利益を上げる事が出来ません。

中小企業では資金も人材も限られているため、全くの新規開発をするのは難しいでしょう。そこで新規ビジネスを考える時は、現行の製品・技術を使いながら、多少の新規性を取り入れたものを製品化することです。しかし多くの中小企業向け戦略・営業コンサルティングが成功しない要因のひとつは、コンサルタントが開発と営業を両方を経験したことがなく、新しい切り口でビジネスチャンスを作り出す事が出来ないという点ではないかと思います。また大企業であれば人材も豊富にいるのでプロジェクトメンバーを集める事も出来ますが、中小企業ではそう簡単な話ではありません。但し大企業出身のコンサルタントだと、そうした中小企業の実態は中々理解出来ないのが普通のようです。

全企業数の99.7%(従業員ベースだと約7割相当)が中小企業ですので、中小企業が強くなって行かなければ日本の会社全体も強くなりません。日本の社会がもっと活況になるためにも、中小企業には頑張って欲しいところです。